人材関連コラム
2026年07月13日

目次
「雇用 補助金」という言葉で検索されることが多いですが、実務上、IT企業が継続的に活用すべきなのは厚生労働省が管轄する「助成金」です。
雇用関係助成金とは、一定の雇用条件(正社員化や教育など)を満たすことで、国から原則として支給される返済不要の資金のことです。 経済産業省の「補助金」が予算枠を奪い合う「採択制」であるのに対し、助成金は要件さえ満たせば受給できるため、経営計画に組み込みやすいのが特徴です。
比較表:助成金と補助金の決定的な違い
| 項目 | 助成金(厚労省管轄) | 補助金(経産省管轄) |
|---|---|---|
| 主な目的 | 雇用の安定・人材育成 | 事業拡大・設備投資 |
| 受給の可否 | 要件を満たせば原則受給 | 審査による採択制(倍率高) |
| 申請時期 | 通年(随時) | 期間限定(公募制) |
| IT企業の活用例 | 未経験者の正社員登用、研修 | サーバー導入、SaaS開発 |
ここまでは一般的な定義ですが、現場のプロから見ると、実はここからが本当の分かれ道になります。2026年の最新情勢を踏まえた、IT経営者が直面する「現実」を見ていきましょう。
2026年2月現在、IT業界の採用環境は数年前とは比較にならないほどシビアです。約8割の企業が「求人を出しても応募が来ない、来ても年収が高すぎて手が出せない」という壁にぶつかっています。
さらに追い打ちをかけるのが、社会保険の適用範囲の段階的な拡大です。2024年の法改正以降、これまで適用外だった小規模な組織でも社会保険料の負担が重くのしかかり、実質的な人件費は2024年比で約5〜8%上昇しています。
ワンポイント!
「経営者の皆さんが見落としがちなのが、社会保険料の『会社負担分』の増加です。2026年度の予算案では、賃上げを行う企業への支援が手厚くなる一方で、現状維持のままでは負担だけが増える構造になっています。単に『給料を上げる』のではなく、助成金を活用して人件費負担を国にバックアップしてもらう発想への転換が不可欠です。」
2026年の賢い経営者は「助成金(キャッシュイン)」と「税制優遇(支出減)」の二本立てで考えます。
具体的には、「キャリアアップ助成金」で採用時の現金を確保しつつ、「賃上げ促進税制」を活用して法人税を直接控除する手法です。
例えば、従業員15名規模の貴社が、年収400万円のエンジニアを1名採用した場合、以下のような「コスト逆転現象」が起きます。
1.キャリアアップ助成金:1人あたり約80万円受給(2026年度加算適用時)
2.賃上げ促進税制:給与増加額の最大45%を法人税から控除
3.結果:採用・教育にかかる実質負担額が、額面給与の約30%まで圧縮される
2026年のIT企業が注力すべきは、以下の2つのルートを戦略的に使い分けることです。
経験者採用が困難な今、ポテンシャル層を採用し、高度なIT研修を受けさせる「未経験採用×リスキリング」ルートです。
メリット:研修費用の最大75%が助成され、さらに研修中の賃金も一部補填されます。
2026年のポイント:AI・生成AI活用研修や、サイバーセキュリティ関連の研修は引き続き重点支援対象となっています。
まずは契約社員として採用し、6ヶ月後に正社員へ転換する「有期雇用からの正社員化」ルートです。
メリット:1人あたり最大80万円(※2026年2月時点の予測値・要件による)が支給されます。
注意点:正社員へ転換する日よりも前に「キャリアアップ計画書」を労働局へ提出しておく必要があります。これを忘れると1円ももらえません。逆に言えば、この『計画届』さえ受理されれば、受給へのハードルは一気に下がります。万が一の不備も、事前に社労士のチェックを通しておくのが鉄則です。
ワンポイント!
「IT現場でよくある失敗が、研修期間中の『出勤簿』や『賃金台帳』の不備です。特にフルリモートワークの場合、客観的な打刻データがないと審査で撥ねられます。2026年の審査はデジタル証跡の整合性を厳格に見てくるため、ログ管理ツールの導入は必須と言えます。このデジタル証跡の整備は、助成金のためだけでなく、将来的な労務トラブルを防ぐ『守りの経営』にも直結します。」
使い方:このセクションをスクリーンショットして、スマホに保存してください。
●雇用保険の適用事業所になっているか?
●過去1年以内に会社都合の解雇(リストラ)を行っていないか?
●就業規則が2026年の最新法改正(育児・介護休業法等)に対応しているか?
●残業代の未払いや労働基準法違反がないか?
●採用「前」に労働局へ計画届を提出するフローが社内にあるか?
●リモートワーク時の労働時間管理(ログ打刻等)が客観的に証明できるか?
●研修(リスキリング)の内容が、業務に関連する専門的なものか?
A:可能です。ただし、2026年の最新要件は非常に細かく、書類の不備で不支給になるリスクがあります。事務工数と受給額のバランスを考え、受給額が300万円を超える場合は専門家(社労士)への依頼を推奨します。
A:一般的には「着手金0〜5万円 + 成功報酬15〜25%」が相場です。IT業界に詳しく、税制優遇までアドバイスできる社労士を選ぶのがコツです。
A:助成金は「不採択」ではなく「不支給」という扱いになります。理由を解消すれば、別の採用枠で申請することは十分に可能です。
2026年のIT経営において、人件費の高騰は避けて通れない課題です。しかし、今回ご紹介した「助成金×税制」のハイブリッド戦略を実践すれば、コストを抑えつつ、優秀な人材を育成・確保する攻めの経営が可能になります。
採用コストの削減は、単なる経費節減ではありません。 それは、浮いた資金をさらなる技術投資やエンジニアの待遇改善に回し、「選ばれる企業」へと進化するための先行投資です。
しかし、複雑化する2026年の助成金要件を、経営の傍ら一人で精査し続けるのは至難の業です。計画届の一文字のミス、あるいはログ管理の不備ひとつで、受給額がゼロになるリスクも隣り合わせです。
「うちの場合、結局いくら受給できるのか?」 「自社のエンジニア採用に最適なルートを教えてほしい」
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参考文献
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