人材関連コラム
2026年07月16日

目次
秋採用とは、一般的に卒業前年度の9月から11月頃に行われる新卒採用活動を指します。春採用(3月〜6月)で計画人数に達しなかった欠員を補充する目的だけでなく、留学帰国生や公務員試験併願者など、春の選考スケジュールには乗らなかった特定の優秀層を確保するための戦略的な採用フェーズとしても位置づけられています。
秋採用の市場特性を正しく理解するために、春採用および冬採用との違いを以下の比較表にまとめました。
比較表:新卒採用フェーズ別の特徴比較
| 比較項目 | 春採用(3月〜6月) | 秋採用(9月〜11月) | 冬採用(12月〜3月) |
|---|---|---|---|
| 主な学生層 | 一般的な就活生 (ボリューム層) |
公務員併願組 留学帰国生 部活引退組 内定再考組 |
就活出遅れ層 内定未保持者 超直前補充層 |
| 学生の数 | 極めて多い | 少ない(が、質は高い) | 非常に少ない |
| 競合企業の数 | 非常に多い (大手が中心) |
減少する (中堅・ベンチャーが主役) |
少ない |
| 選考スピード | 通常(1ヶ月〜2ヶ月) | 極めて速い(2週間〜3週間) | 超特急(1週間〜2週間) |
| 採用コスト | 高い(広告費・工数大) | 抑制可能(スカウト活用が主) | 低い(が、マッチング難) |
ここまでは秋採用の一般的な定義ですが、実務を担う人事担当者にとって、本当に重要なのは「定義」ではなく「現場のリアル」です。実は、2025年卒以降の採用市場では、秋採用の定義そのものが、『内定保持者による就職活動の継続』という異常事態によって書き換えられようとしています。
「なぜ、あんなに志望度が高いと言っていた学生が辞退したのか?」
採用担当者が抱くこの疑問は、現在の採用市場の構造を直視することで明らかになります。リクルート就職みらい研究所の調査によれば、8月時点の大学生の内定率は9割を超えていますが、注目すべきは「内定を保持したまま就職活動を継続している学生」が約3割も存在するという事実です。
これは、学生側が「内定は持っているが、本当にこの会社でいいのか?」という不安を抱えながら、夏休みを利用して「より納得感のある1社」を最後まで探し続けていることを意味します。つまり、あなたが経験した内定辞退は、自社の魅力不足ではなく、学生側による「キャリアの再考」市場全体の傾向に巻き込まれた結果とも言えるのです。
●ワンポイント!
データで見ると、8月以降に内定を辞退する学生の多くは、決して不誠実なわけではありません。むしろ、真面目に自分のキャリアを考え抜いた結果、『春に勢いで決めてしまった大手企業』よりも『自分の個性が活かせる中堅・ベンチャー企業』へと目を向け直す層が一定数存在します。この『内定再考組』こそ、秋採用における隠れたターゲットなのです。
内定保持者が活動を続ける現状は、裏を返せばチャンスです。春の時点では大手のネームバリューの壁に阻まれて接点が持てなかった学生が、今、フラットな視点であなたの会社を評価しようとしているのです。
「秋まで残っている学生に優秀な人はいない」という偏見は、今すぐ捨ててください。秋採用の市場には、春の選考には物理的に参加できなかった、あるいは明確な目的を持って時期をずらした「希少な優秀層」が確実に存在します。
具体的には、以下の4つの属性に分類されます。
公務員試験・教員採用試験からの転換組は、8月下旬から9月にかけての試験結果発表を受けて民間就活に切り替えます。
特徴: 論理的思考力、学習能力、事務処理能力が極めて高い。
採用のコツ: IT業界の「社会貢献性」や「公共性」を訴求することで、公務員志望だった彼らの価値観に合致させやすい。
海外の大学は6月〜8月に卒業・帰国となるため、彼らにとっての就活本番はまさに「秋」です。
特徴: 語学力はもちろん、異文化適応能力、主体性、タフネスを備えている。
採用のコツ: 「グローバルな環境」だけでなく、個人の裁量が大きいIT企業のスピード感をアピールする。
夏の大会やリーグ戦が終了するまで競技に打ち込んでいた学生たちです。
特徴: 目標達成意欲、チームワーク、ストレス耐性が抜群に高い。
採用のコツ: 競技で培った「勝負強さ」がビジネスの現場でどう活きるかを具体的に提示する。
前述の通り、一度は内定を得たものの、入社後のミスマッチを恐れて活動を継続している層です。
特徴: 自己分析が深く、自分に合う環境を真剣に探している。
採用のコツ: カジュアル面談を通じて、現場社員の「リアルな働き方」や「社風」を包み隠さず伝える。
役員会議で「採用が遅れています、申し訳ありません」と謝る必要はありません。代わりに、こう提案してください。
「春の母集団形成では出会えなかった『特定の専門性を持つ層』にターゲットを絞り、秋採用で採用ポートフォリオを最適化します」
役員を納得させるためのROI(投資対効果)に基づいた説得ロジックは、以下の3点に集約されます。
1.競合コストの低下: 春には数千万円の広告費を投じる大手企業と競合していましたが、秋は競合が激減します。1人あたりの採用単価(CPH)を抑えつつ、接触密度を高められる「ボーナスタイム」であることを強調してください。
2.質の担保: 「公務員試験組のSPIスコアは、春の平均より15%高い」といった客観的なデータを引用し、質の低下どころか、むしろ「質の向上」が見込まれることを示します。
3.早期離職リスクの低減: 秋に動いている学生は、春の熱狂に流されず「自分の意志」で企業を選び直しています。学生が抱く「納得感」こそが、入社後の定着率(リテンション)に直結することを説得材料にしてください。
「春の未達」を「秋の戦略的獲得」へと文脈を書き換える。これが、人事担当者が持つべき「攻めのロジック」です。
秋採用の学生は焦っています。そして、あなたも焦っています。学生と企業のニーズを合致させる唯一の解決策は「スピード」です。春と同じ「エントリーから内定まで1ヶ月」という悠長なフローでは、決断の早い他社に確実に奪われます。
以下に、秋採用における最適解とされる「最短2週間内定フロー」の構成案を提示します。
比較表: 通常フロー vs 秋採用・ハイスピードフロー
| ステップ | 通常フロー (約1ヶ月) | 秋採用・ハイスピードフロー(最短2週間) |
|---|---|---|
| 1. 接触 | 説明会予約 → 参加 | スカウト送信 → カジュアル面談(当日〜3日以内) |
| 2. 一次選考 | 適性検査 → 書類選考 | 面談内で簡易選考 → その場で次選考日程確定 |
| 3. 二次選考 | 人事面接(1週間後) | 現場エース面接(面談から3日以内)+ 適性検査並行 |
| 4. 最終選考 | 役員面接(さらに1週間後) | 役員・社長面接(二次から3日以内) |
| 5. 内定 | 郵送・連絡(数日後) | 面接終了直後にフィードバック + その場で内定通知 |
※秋の学生はスキル評価以上に『キャリア観の合致』を重視するため、面接では自社で働くことへの納得感を深掘りすべきです。
●鉄則1:役員のカレンダーをあらかじめ押さえる
秋採用期間中の特定の曜日・時間を「最終面接枠」として役員の予定をブロックしておいてください。日程調整のラリーをゼロにすることが最優先です。
●鉄則2:カジュアル面談を「口説き」の場にする
「選考」ではなく「相互理解」を前面に出し、学生の不安(なぜ秋採用の時期に募集しているのか?)を払拭することに全力を注いでください。
●鉄則3:適性検査は「後出し」を許容する
まずは顔を合わせること。適性検査の結果は、最終面接までの間に確認できれば十分です。
秋採用において、求人広告を出し直すのは非効率です。母集団が少なくなっている時期に「待ち」の姿勢では、ターゲットに出会える確率は極めて低いからです。今こそ、ダイレクトリクルーティング(スカウト)へ舵を切るべきです。
特に、ターゲット属性に合わせた「刺さる最初の一行」が勝負を分けます。
【公務員試験組へのアプローチ例】
「公務員試験という高い壁に挑んでこられた〇〇さんの『論理的思考力』と『粘り強さ』を、弊社の公共システム開発部門で活かしていただけないでしょうか。試験勉強で培われた知識は、ITの現場でこそ真価を発揮します。」
【内定再考組へのアプローチ例】
「すでに内定をお持ちかもしれませんが、もし『本当にこの環境で自分の個性が活きるのか』という迷いが1%でもあるなら、一度弊社の現場社員と本音で話してみませんか。選考ではなく、キャリアの棚卸しの場として活用してください。」
●ワンポイント!
秋のスカウトで最も重要なのは『特別感』です。学生は『なぜ今、自分に連絡が来たのか』を敏感に察知します。プロフィールを読み込み、『〇〇という経験を持つあなただからこそ、弊社のこの課題を解決してほしい』という具体的な期待を伝えることで、承諾率は春より大きく跳ね上がります。
もう一度お伝えします。7月末の内定辞退は、決してあなたの責任ではありません。むしろ、より自社にマッチした、より優秀な人材を秋に迎えるための「スペースが空いた」のだと捉えてください。
●秋採用は「高スペック層の再編期」である
●公務員組・留学組など、春には出会えなかった層を狙い撃つ
●役員には「戦略的再編」としてのROIを提示する
●最短2週間の「ハイスピードフロー」と「スカウト」で勝負を決める
この4点を実行すれば、採用活動への手応えが大きく変わっているはずです。秋採用の成功は、あなたのすぐ目の前にあります。
とはいえ、限られたリソースの中で「ハイスピード選考」の設計や、ターゲットに刺さる「スカウト戦略」を一人で完結させるのは容易なことではありません。店長や現場からの要望、本部からのプレッシャーに、一人で頭を抱える必要はないのです。
私たちヒューマンワークは、取引社数79,127社(2024年6月末現在)の支援実績をもとに、貴社の組織文化に合わせた「秋の逆転シナリオ」を一緒に描き、実行をサポートします。
「うちの会社の場合、どの層を狙うのが正解か?」 「役員を説得するための具体的な市場データが欲しい」
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参考文献
●リクルート就職みらい研究所「就職プロセス調査(2025年卒)」
●マイナビ「2025年卒 大学就職企業人気ランキング」
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